モリ工業株式会社

ステンレスに関する品質Q&A

ステンレスについて

  • ステンレスについて
  • ステンレス鋼(Stainless Steel)の最大の特徴は、その名の通り「さびにくい」ことです。鉄と炭素の合金である炭素鋼に腐食に強い性質を持たせるためにクロムやニッケルを混ぜ合わせた鋼をステンレス鋼と呼びます。その定義は、時代と共に少しは変わっておりますけれどもSUS409Lなどが、その仲間入りをしたことで、クロムを10.5%以上含む鋼をステンレス鋼と称しています。クロムは酸化被膜あるいは水酸化被膜である不動態被膜とよばれる緻密な膜を表面に形成することでステンレス鋼に耐食性をもたらします。
    ステンレス鋼は、混ぜ合わせる合金の種類や量によって多くの鋼種が存在しますが、大きく分けてCr系とNi系(Cr-Ni系)に大別されます。またステンレス鋼は、金属組織によって分類もされます。
    Cr系ステンレス鋼は、炭素量とCrの相対的な関係からマルテンサイト系とフェライト系に分類されます。マルテンサイト系ステンレスは成分と熱処理条件により硬化することから高強度で耐食、耐熱性が必要な機械構造用部品や刃物に使用されます。一方、フェライト系ステンレス鋼は硬くなることが殆どなく、マルテンサイト系と比べ成形加工性及び耐食性が優れていることから、厨房機器、自動車用部品などに使用されています。
    またNi系であるオーステナイト系ステンレス鋼は延性、靱性に優れていることで冷間加工性が良好です。併せて溶接性、耐食性および低温、高温での性質に関しても優れています。これらの特性から使用用途は多岐にわたり多種多様な分野で使用されています。ところでSUS304はオーステナイト系ステンレスの代表鋼種でありNiが8%程度ですが、このオーステナイトは準安定状態にあり、これに加工を施すとマルテンサイトに変態します。加工によって誘発される変態量は、安定度に影響する合金元素の種類と量、加工温度、加工度、加工速度などによって異なってきます。このように、加工によってマルテンサイトが生成すると加工硬化を示すとともに、磁性も現れます。
    以上のような特質を備えたステンレスは、優れた耐食性と機能性により、私たちの生活において最も深いつながりをもつ金属として、建造物をはじめ化学設備、自動車、電気製品、家具、厨房設備などの各方面で活用されており、生活の向上に、産業の発展に、重要な役割を果たしています。

ステンレスQ&A

  • ステンレス鋼は普通鋼と比較して何が違うのですか?
  • 鉄と炭素の合金である炭素鋼に腐食に強い性質を持たせるためにクロム(Cr)やニッケル(Ni)を混ぜ合わせた鋼をステンレス鋼と呼びます。Crは酸化被膜あるいは水酸化被膜である不動態被膜とよばれる緻密な膜を表面に形成することでステンレス鋼に耐食性をもたらします。また、使用する目的に応じてCrやNiの他に色々な元素を添加したり、特定の元素を減少させることで、その性質を変えることができます。
  • ステンレス鋼の材質、種類、特徴を教えてください。
  • ステンレス鋼の種類は多種多様です。代表的な鋼種に関して別表にまとめています。
  • ステンレス鋼はどのような用途に向いているのですか?
  • やはり「さびにくさ」という能力を発揮できる場所であると思います。また多品種であるステンレスは、その用途に特化した能力を有しているものも多くあることから、その用途に最も適した、鋼種を選定することが重要です。
  • ステンレス鋼はサビないのですか?
  • まったくサビないわけではありません。ステンレス鋼の表面を守る不動態被膜はハロゲンイオン(周期表17族元素のイオン:塩素イオンなど)に局部的に破壊されることでサビの発生が見られます。また湿気があるとサビやすくなります。表面の清掃、洗浄など簡単な手入れが効果的です。
  • ステンレス鋼は加工すると硬くなるのですか?
  • フェライト系ステンレス鋼はオーステナイト系ステンレス鋼と比較すると加工硬化性は低いと言えます。オーステナイト系ステンレス鋼でNiが8%程度のものは、オーステナイトが準安定状態にあり、これに加工を施すとマルテンサイトに変態します。加工によって誘発される変態量は、安定度に影響する合金元素の種類と量、加工温度、加工度、加工速度などによって異なってきます。このように、加工によってマルテンサイトが生成されると加工硬化します。
  • ステンレス鋼は磁性がありますか?
  • マルテンサイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼は磁性があります。オーステナイト系ステンレス鋼は磁性がありません。しかしSUS304のようにNiが8%程度のものは、オーステナイトが準安定状態にあり、これに加工を施すとマルテンサイトに変態します。従って、マルテンサイトへ変態する量によって磁性の度合いは変わります。
  • パイプの溶接方法にはどんなものがあり、特徴はなんですか?
  • 弊社のパイプ溶接方法は次の3種類があります。
    ①TIG溶接(Tungsten Inert Gas Arc Weldingの略)
    タングステンとステンレス母材の間にシールドガスとしてアルゴンを用い、そこにアークを発生させて、その熱で材料を溶融、凝固させる溶接方法です。厚肉の溶接には、アークの拡散が大きく不向きであることから、薄肉管の溶接に使用されています。因みに、厚肉はTIG溶接の一種であるプラズマアーク溶接で溶接しています。この溶接は、アークのエネルギー密度を上げて溶接することができるため厚肉に採用しています。また弊社では、溶加材を用いずに溶接を行っています。
    ②高周波誘導溶接
    コイルをパイプの外周に巻き付けるように設置し、そこに高周波電流を流すとパイプ表面に誘導電流が発生します。その電流は、「表皮効果」と「近接効果」によって、溶接部の開先エッジ部に集中し電気抵抗によって発熱します。その部分をスクイズロールで締め付け圧着することで接合します。溶接部は、TIG溶接と比較すると極めて小さい組織になることから靱性が増し、特にフェライト系ステンレス鋼の溶接には適しています。
    ③レーザー溶接
    レーザー溶接は、レーザー光で母材を溶融させ凝固することで接合します。レーザー光は極めてエネルギー密度が高く、非常に少ない溶融量で接合することが可能となります。従って、TIG溶接と比較すると細かい組織になることから、高周波誘導溶接では製造が難しい小径管のフェライト系ステンレス鋼の溶接に適しています。

製品Q&A

  • FBの種類について
  • FBは下記の種類があります。
    ・ホットFB(熱間品)・・・ステンレス鋼片を熱間圧延後、酸化スケールを除去し、仕上げをNO1にした製品。
    ・スリットFB(モリホット)・・・スリットコイルより、冷間圧延した製品。
    ・HOT-S FB・・・スリットコイルを冷間加工し、ショットブラストを加えた製品。
    ・COLD FB・・・スリットコイルまたは熱間圧延品を冷間加工した製品。
    ・HL FB・・・冷間加工品にHL加工し、ビニール個装した製品。
  • アングルの種類について
  • アングルは下記の種類があります。
    ・熱間アングル(等辺・不等辺)・・・ステンレス鋼片を熱間圧延後、酸化スケールを除去し、仕上げをNO1にした製品。
    ・HL・#400アングル・・・熱間アングルよりHL・#400研磨した製品。
    ・ピン角コールドアングル・・・熱間アングルより冷間引抜し、角を出した製品。
    ・フォーミングアングル・・・スリットコイルを冷間加工した製品。(仕上げ2B、CG(※)、#400)
    (※)CG・・・コイルグラインダー研磨
  • 丸棒の種類について
  • 丸棒は下記の種類があります。
    ・酸洗丸棒・・・ステンレス鋼片を熱間圧延後、酸化スケールを除去し、仕上げをNO1にした製品。
    ・引抜丸棒・・・酸洗丸棒より冷間引抜した製品。(注)
    ・HL丸棒・・・冷間加工した丸棒をHL研磨した製品。
    ・プラスコンバインド丸棒・・・ピーリング丸棒の外径公差に合わせて冷間引抜した製品。
    ・ピーリング丸棒・・・ステンレス鋼片を熱間圧延後、酸化スケールを除去し、仕上げをピーリング加工(※)した製品。
    ・センタレス丸棒・・・引抜丸棒またはピーリング丸棒より砥石研磨した製品。
    (注)φ25まで上記工程にて製造
    (※)ピーリング加工・・・母材を固定して、バイトにて一皮剥く加工